ワケあり彼女に愛のキスを



「私が好きって言ったら、北川さんもそうだって……私の事、大事だって言ったのに他の女と同棲なんて……絶対にあなたが北川さんの部屋に無理やり押しかけたに決まってる……っ」

押しかけた……のはその通りなだけに、頬を手で覆いながらも何か言うのはよそうとも思ったのだが。
女の言った言葉が少し引っかかり、舞衣がじっと見返した。

涙を滲ませているところを見ると、よほど想いが強いのだろうと予想でき、気持ちが分かるだけにわずかに胸が痛みながらもゆっくりと口を開く。
叩かれた時に切れたのか、口の中に血の味が広がっていた。

「ショックなのは分かりますけど……優悟は、好きだとは言わないと思います」

『本気のヤツなんて後々面倒だからまず相手にしねーよ。軽く遊べるようなヤツ相手にお互い分かり合った上で割り切って遊んでんだから問題ねーだろ』
優悟は確かにそう言っていた。割り切って遊べるような女しか相手にしないと。

それを信じるなら、優悟が〝大事だ〟なんて口にするハズがないし、その前に好きだと言われてそれに想いを返すなんて事まず考えられない。
そう判断した舞衣が「何か誤解されてるんじゃ……」と言うと、女はギッと奥歯を食いしばったあと口を開く。

「私は誤解なんてしてないっ。あなたこそ勝手に勘違いしてるだけでしょう! あなたが北川さんに嘘つかれてるのよ」

すっかり興奮してしまっている女がそれぞれおろした拳をぶるぶると震わせているのを見てから、舞衣がじっと視線を返した。

「優悟は、嘘をつくような人じゃないです」
「な、にそれ……まるで北川さんの事知っているような口叩かないで! 嘘つかれて騙されてるのはそっちのくせにっ」
「優悟は、相手が期待しちゃうような事は多分言いません。気持ちを返せないのが自分で分かってるから。それなのに自分に都合のいいように捕えて勘違いしてるのは……」