「何でもないのに一緒に住んでるの?」
「一緒に……?」
眉をしかめ、優悟が話したのか、それとも部屋の前までつけられた事があったのかと考えを巡らせていると、女がはっと笑みを吐き出す。
「とぼけても無駄だから。あなたがマンションに入っていってから数分後に北川さんの部屋の電気がついたのを見てたんだもの。
それも一日や二日じゃない。この一ヶ月間ずっと。一緒に住んでるんでしょう?」
優悟に聞くわけでもなく、一ヶ月もただ眺めているだけだったという事は、それほど親しい仲ではないという事なのか。
というか一ヶ月ただ眺めてるのもすごいなと少し思ったものの、でも舞衣自身にもそういった傾向があるため、まぁ気持ちは分からないでもないけれど……と思い黙っていると。
ツカツカと勢いよく歩いてきた女が舞衣の目の前まで行き、急に手を振り上げた。
そして、歩み寄られた事にただ驚いていた舞衣に向かってそれを振り下ろす。
バチン、という乾いた音がエレベーターホールに響き、与えられた衝撃とその後にピリピリと襲ってきた痛みに、舞衣が叩かれた左頬に手をあてる。
なんとか踏みとどまったため、転んだりはしなかったが……それにしたって結構な衝撃だった。
結構な衝撃だったし……なにしろ、理由が分からな過ぎる。どこでヒートアップしてこんな行動に出たのかが理解できない。
そもそも事実関係をきちんと確認もせずにこんな事を突然……。
色々と考えながらも何ひとつ理解できずに舞衣が目をパチパチとしながらぶれた視界をゆっくりと戻すと。
きつく歪んだ瞳に睨みつけられた。
急に叩きつけてきたにも関わらず、怒りはまだ継続中どころかもっと昂ぶっているようだった。



