ワケあり彼女に愛のキスを



正直、まだ一回やられただけならそこまでする必要もないとも思った優悟だったが。

男の自分はゴミを漁られたところでどうという事はないが、舞衣は違うだろうと考え直し、頷いたものだった。
他人に見られたくないゴミだって出るだろうし、いくら舞衣があっけらかんとしていたってゴミを荒らされるなんて事は気持ち悪いに決まっているだろうからと。

ゴミを荒らされた週の木曜日。
いくらやる気になっているからと言って、舞衣ひとりに見張らせるわけにもいかず、結局優悟もその隣で犯人の出現を待つ事になった。
もし揉みあいにでもなった場合、小柄な舞衣にどうこうできるとは思えないし、何より心配で放っておけない。

その前に、しゃしゃり出ずに管理人に任せておけばいいとはかなり序盤の段階で思っていたのだが、舞衣の性格上それは無理だと発言も諦めた。

何に対しても物怖じせずに突っ走ってしまうのは、今までの舞衣を見て勉強済みだ。
どうせやめろと言ったところで、ひとりでやるし大丈夫と返ってくるのは分かっているし、だったら最初から無駄な抵抗はせず付き合った方が平和だ。

ふたりが身を隠すのは一階の廊下。
腰の高さほどの塀の10メートルほど先には、駐車場を挟んでゴミ捨て場がある。

普段ならゴミは朝に出すのが決まりだが、今は夜。
朝は仕事があり長時間見張れないと考え、あえて夜に出す事にした。犯人が見ているかも、そもそも犯人がいるかも分からないが、舞衣の気がするならそれでいいと割り切る。
数十分こうしていれば舞衣も諦めるだろう。

20時の空の下。眺める先で、街灯に照らされたゴミ捨て場がぼんやりと光る。
捨ててあるのはもちろん、優悟たちのゴミ一袋だけだった。

じっとそれを眺めていた舞衣が、隣にしゃがむ優悟を見上げ笑う。