「あ、待って、秀ちゃん……!」
と、すぐに舞衣も続こうとしたのだが……膝が痛むのか、小さく「痛……っ」と呟いてしゃがみ込む。
舞衣は自分の血まみれの膝を見てから秀一の出て行ったドアを見つめ……それから、優悟を睨んだ。
「……睨まれるような事はしてねーだろ」
「したじゃない! 秀ちゃんに鍵取られちゃったんだから! 私死守してたのにっ」
「あのまま放っておいたらもっとひどい怪我するのが目に見えてたから割って入ってやったんだろーが。まず感謝しろ」
「こんな怪我なんていつもの事だし大丈夫だもん」
「いつも? いつもって……おまえ、あいつに殴られたりしてたのか?」
顔をしかめながら聞いた優悟に、舞衣は「関係ないでしょ」と、ぷいっと音がしそうなくらいの勢いでそっぽを向く。
そんな舞衣の態度に、助けなきゃよかった……と舌打ちしながら優悟が出て行こうとしたのだが。
数歩歩いたところで、ワイシャツをくいっと引っ張られ立ち止まる。
振り返ると、いつの間にか立ち上がった舞衣が優悟の肘のあたりのワイシャツを掴んでいて。
何も言わずに見ていると、じっと睨むような上目目線が向けられた。
大きな瞳が、物言いたそうに優悟を見つめる。
「……お願いがあるんだけど」
まだ怒っているような声色に、なんで俺が怒られなきゃなんねーんだよと内心思いながらじっと見つめ返す。



