「それぐらいにしといた方がいいんじゃねーの」
優悟を見た舞衣は、誰だか知らないのかポカンとした表情をし、一方の秀一は驚きからか目を見開いた後、眉間にシワを寄せた。
「それぐらいにって、北川さんの方が女の扱いひどいんじゃないですか?」
「知ってんの? 俺の事」
「手をつけてすぐ捨てるって有名ですよ。ポイ捨てした女が社内にゴロゴロいるとか」
「それは嘘だな。仕事がやりにくくなるのは嫌だから社内の女に手出した事はない。
それに、女に手を上げた事もねーな」
優悟がチラっと秀一の後ろを見ると、座り込んだままの舞衣がこちらを見ていた。
よく見れば頬にも擦ったような跡がある。
「ああ、だってこいつは女だけど女じゃないっていうか……とにかくいいんですよ。扱い雑で。ちょっと異常でしつこいし。
だから北川さんに庇ってもらえるような女じゃ……」
「こいつがどんな女だろうと関係ねーだろ」
「女が暴力振るわれてるところなんて黙って見てるわけにもいかねーから止めただけだ」と、興味なさそうに言う優悟に、秀一は眉を寄せる。
言葉を遮られた事にか、優悟の言葉になのか、理由は分からないが苛立ちを隠せない様子だった。
ムッとした顔をした秀一は、持っていたキーケースからひとつの鍵を取ると、キーケースを舞衣の前に落とし。
「じゃ、鍵もらっていくから。今の彼女と終わったら連絡するわ」
そう言って書庫室を後にした。



