ワケあり彼女に愛のキスを



「や……っ、返して……っ!」
「しつこいなー。もう諦めろよ。俺彼女と約束しちゃったし無理なんだって」
「だって! そんな急に話されたって分からないし、それに部屋出て行けなんて言われたって困る……っ」
「大丈夫だって。おまえの事だからどうとでもするだろ? ほら、おまえ顔可愛いし困ってれば助けてくれるヤツだっているからさ」
「そんなの嫌……っ。なんで……? 秀ちゃん、中学の時だって私の事助けてくれたのに、なんで……」
「いつの話してんだよ。中学ん時から一緒にいたんだから、少しくらい離れたって別にいいだろ。ほら……離せって」

目の前で繰り広げられる修羅場に、優悟が面倒くさそうだしと退散しようとした時。
舞衣が秀一に押され、「きゃっ」と豪快に転ばされた。

ビニール製の床に倒れた舞衣の膝からは、摩擦で出来たものなのか、倒れた時、何かの角にでもぶつけたのか、血が流れ出すほどの傷ができていた。
あまり見たくはない光景にさすがに優悟が足を止めていると、その視線の先で、舞衣が座り込んだまま秀一の足にしがみつく。

「舞衣っ、いい加減しつけーぞっ!」
「鍵っ、返して……!」

床にかなり強く突き飛ばされたハズの舞衣が必死の表情で懇願するも……秀一は、それを剥がそうとしながらズルズルと舞衣を引きずる。

どんだけ図太いんだ、この女……とほとんど呆れながらも、舞衣の膝から出た血がどんどん赤く滲んでいくのが分かり。
面倒くせーと思いながらも、放っておけず、優悟がふたりの前に姿を現した。