「妹だから恋愛にはならないって普段言ってるくせに、都合のいい時だけ女扱いか。
いい免罪符だな、〝妹〟って」
ゴミ箱に空になった缶を投げ入れた優悟が立ち上がると、秀一は睨むような顔つきで優悟を見た。
「北川さんには関係ないじゃないですか」
「怒るなって。俺も今度〝妹〟って使ってみようと思っただけだし」
「あ……なんだ、そういう意味ですか」
感じた敵意は勘違いだったのかと、表情を緩めた秀一に優悟が「そういえば」と話題を変える。
「おまえに鍵奪われた後、城ノ内行くところがないとかで笹田に助けてもらおうとしてたけど……いいのか?」
社内の人間なら、笹田の噂を知らない者はいない。
当然、秀一も知っていたようで、一瞬顔をしかめたのだが。
「まじっすか。うわー。本当に笹田んとこに泊まってたらすげぇ」
次の瞬間には、そう笑っていた。
恐らく、同類、同士なのに。
秀一がしている女遊びなんて、自分だって飽きるほどしてきたのに。
苛立ちばかりが募るのは、やはり同族嫌悪なのだろうか。
溜まっていく苛立ちを感じながら、笑う秀一から優悟が目を逸らした。
自分も……第三者にはこんな風に映っているのだろうか。
だとしたら愚かだなと自嘲するような笑みを浮かべ、優悟がカフェスペースを後にした。



