ワケあり彼女に愛のキスを



「急に気持ちが変わる事だってあるだろ? 彼女いる間はセフレでもいいけど、おまえ本気すぎるから使えないんだよなぁ。
大丈夫だって。彼女との関係が終わったらまた元通りおまえと一緒に暮らすし」
「セフレ……?」
「まぁ、そういう事だから。おまえの荷物は後で住所メールで送ってくれれば着払いで届けてやるから。
ああでも、家電とか家具は置いて行けよな」

つまり、ほぼ身一つで出て行けと言う秀一にいい噂がない事は、優悟も知っていた。
女関係は特にひどく、女を食い物にしてるという。
優悟も異性とは適当な関係しか持たないだけにあまり強くは言えないのだが……それにしても、と秀一を見ているうちに自然と眉が寄っていた。

事情は分からないにしても、言い分があまりにひどすぎる。

秀一の事をどうこう言えない自覚のある優悟でさえ、自分の事を棚に上げ、秀一をひどい男だとものの数分で理解できた。
なのに、なぜ何年も付き合っているらしい舞衣はそれを分からないのか。
見ていて不思議になる。

秀一が離れようとしているのに、舞衣は必死にしがみついているのだから。
これが逆ならまだ考えられもするものの……。

現に今も……秀一が奪いとったキーケースを取り返そうと、舞衣は秀一に文字通りしがみついていた。