ワケあり彼女に愛のキスを



「うわー、広い……。おしゃれだね」
「玄関の左側に洗面台あるから手洗って来い。メシ食うんだろ」
「あ、うん」

リビングを出て行く舞衣の後ろ姿を眺めながら、優悟がさきほど考えていた疑問に答えを出す。

多分、舞衣のはすべてが演技じゃないから戸惑うのだと。
優悟は今年二十六。関係を持つ女も同年代。いい大人だ。となれば、これまでの人生で色々学び、建前や演技といったものも自然と身についてくるわけで。
優悟に言い寄ってくる女なんて、そこに特化しているような人間ばかりだった。

住んでるマンションからか、優悟の家が金持ちだと認識した上での事なんだろう。
自分をよく見せていかに優悟に気に入ってもらうか。そこばかり意識しているような女ばかりで。
だから、この部屋に来た時も、さきほどの舞衣と同じような反応を見せた女はたくさんいた。

すごい。きれい。おしゃれ。褒め言葉を並べ、ひどい時には無邪気さをアピールするためかそれとも誘っていたのか。
ベッドに転がり、ふわふわだとはしゃぐヤツまでいて。

でも。舞衣は多分、自分がいなくてひとりでこの部屋に入ったとしても今と同じリアクションをとっていただろうと、漠然と思う。
会って間もないのに確信できる自分を少し疑問に思うも、答えは簡単だった。

舞衣は優悟に興味がないからだ。
特に好かれようともしていないから、全部が素なのだ。

初めて部屋にいれる、自分を好きじゃない女に苦笑いをもらしながら、優悟がコンビニで買ったものをテーブルに並べていく。