呼び捨てにする舞衣に、それを注意しようとも思ったものの。
歳は、今年二十三の舞衣よりも、今年二十六になる優悟の方が上だが、勤務年数も考えると少しややこしい。
高卒で入社した舞衣は今年勤めて五年目。一方の優悟は四年目。
つまり舞衣の方が先輩にあたるのだ。
信じられない事実ではあるが、でも確かに。
その事実を舞衣に気付かれて、先輩なんだし敬語使えだのと言われても面倒なため、呼び捨ては黙認する事にした。
社内では滅多に会わないし、一晩だけならそれくらい別にどうでもいいかと自分自身を納得させる。
「今日、泊めてくれて本当にありがとう、優悟。すごく助かった」
「……唐突だな」
「言ってなかったと思って」
そう笑いかけてきた舞衣の笑顔と言葉があまりに真っ直ぐだったせいか。
可愛い、なんて感想が頭に浮かび、それを優悟が、いやいやいやと慌ててかき消す。
外見は確かに可愛い。綺麗どころ集めた受付の中でも人目を引くほどに愛らしい。
コロコロ変わる表情も、鈴の鳴るような声もまぁ……魅力的なのかもしれないとは思わなくもない。
けれど、性格というか性質というか、それを知っているのに可愛いと思ってしまうのはマズイ気がした。
社内でも噂になるほどのストーカー女だぞ、こいつ……と、頭に浮かんだ〝可愛い〟の文字をありえないとひと文字ずつ丁寧に消去していく。
「とにかく入れ」
最後の〝い〟の字を綺麗さっぱり消去した後、いつまでもエントランス前で止まったままの舞衣にそう告げれば。
返ってくるのは、パタパタという効果音が聞こえてきそうな足取りと、人懐っこい笑顔。
正直、こんなタイプを演じてる女とは何人も関ってきたのに。
それなのに、舞衣だけは他の女と勝手が違うように感じるのはなんでなのか。
そんな疑問を浮かべながら、エレベーターで六階まで上がり、部屋の鍵を開けた。



