嫌味で言ったのに。
舞衣は本当に〝あ!〟という顔をして優悟のいる場所まで戻ってくる。
軽い足取りというか、ふらふらしてて危なっかしいというか、見ていて不安になるような身のこなしだった。
舞衣の動きには、終始そんな印象を持つ。天真爛漫という言葉を擬人化したらこうなるんだろうという手本のような女だと、優悟が思う。
「よし、じゃあ行こ」
「別に全部持てとは言ってねーだろ。半分くらいは持ってやるから貸せ」
「ううん。大丈夫。北川さんは道案内お願いします」
そうにこっと微笑まれるも……。
例え、強引に泊めろと言ってきた上、コンビニで下着を買わせるような女でも、荷物全部持たせるというのは、男のコケンに関る。
「案内とか面倒くせー事言ってないで、勝手におまえがついてこい。
ふらふらしてんなよ」
重たい方のビニール袋を奪った優悟が歩き出すと、それに驚いた様子の舞衣が呆然とした後、パタパタと走って隣に並ぶ。
そして、20センチくらい低い位置から優悟を見上げて笑った。
「ありがとう。ジェントルマンだね」
「……変な言い方すんな。ジェントルマンなんて言葉久々聞いたし」
言葉のチョイスに思わず笑いながら言うと、それを不思議そうに見上げてくる舞衣に気付き……うっかり笑ってしまった事になんとなくバツが悪く感じて、顔を逸らす。
……が、覗き込んできたりするから、手で顔を覆ってやった。



