ワケあり彼女に愛のキスを



「4412円です。……あの、下着、すぐに履いて帰られるようでしたら開けますけど……」

どうやらさきほどの会話を聞いていたらしい店員が、気を使ったのかコソッと聞いてくるもんだから堪ったもんじゃない。
しかも、どう解釈したのか、激しく勘違いしている。

俺がこいつの下着はぎとったとでも思ってんのか、この女……と顔をしかめる優悟の隣から、舞衣がぴょこっと顔を出す。

「あ、大丈夫です。これから必要になるだけなので」

舞衣のはにかんでも見える笑顔を見た店員は、また違う勘違いしたみたいで、優悟の脳がクラッと揺れる。

「そうなんですか。これから……」

恐らく、これから舞衣が優悟の家に〝初お泊り〟にくる想像をしている店員に、誰が手出すかこんな女っ!と、優悟が頭の中で怒鳴りつけながら怒りを含んだ笑みを浮かべた。

「言っておきますけど、ボランティアですから。こんなん」
「そうなんですか。仲良さそうで羨ましいです。あ、お釣りの78円です」

完全に勘違いされてる事にカチンときながらも、ここで誤解を解くのも無駄な気がして大きなため息を残して店内を出た。

外はもう星が見えるくらいに夜が空を包んでいた。
六月の空には最近雲がかかっている事が多かったが、今日はよく星が見えている。
そんな空の下、いつの間にか先を歩いていた舞衣が、優悟を振り返り笑う。

「北川さん、青信号だよ。速く速く。ダッシュ」
「ペットボトル四本も持ってんだから無理に決まってんだろ。
その前に、金出してやったんだからおまえが持てよ」
「あ、そっか」