ワケあり彼女に愛のキスを



「これじゃあ、菊池と変わらねぇな」

ツラそうにしかめられた顔で「悪い」と呟くように言った優悟の横顔に、シャワーから出てから一度も目が合っていない事に気付いた。
優悟が一度も舞衣を見ていない事に。

それが罪悪感からだと気付いた舞衣が……唇をキュッと引き結び、優悟の腕に触れた。
そして、驚いた優悟が自分を見たのを確認してから口を開く。

シャワーを浴びてきたハズなのに冷たく感じる優悟の腕を掴んだまま、優悟を見つめた。

「私は……優悟に逆らえないから逆らわなかったんじゃないよ。嫌だったらちゃんと嫌って言えてた。でも、気持ちよかった……から」

自分で言い出したにも関わらず恥ずかしくなって顔が熱を持つ。
きっと顔は赤くなっているだろうし、随分はしたない事を言っているような気もするけれど……それでも、必死に優悟を見つめた。

驚きからか、優悟の瞳がわずかに揺れる。

「痛くなかったし、優悟、優しかったから……だから、嫌だとか思わなかったの。私は、いい思いしかしてない」

「だから」と続けた舞衣が、優悟の肩に頭を寄せる。
そしておでこをくっつけながら「だから、そんな顔しないで」と告げた。

最初から合意だったかと聞かれればそうじゃない。だけど、強引に一方的に行われた行為ではないのは確かだった。

初めは優悟からだったとしても、それに応えたのは自分だ。優悟が罪悪感を感じる必要なんてない。罪悪感なんて……感じて欲しくなかった。

だって、触れる指も唇もなにもかも、すべてが優しく想いに溢れていたのだから。

責めるどころか、優悟を気遣い慰めの言葉までかける舞衣に、優悟がふっと困り顔で微笑む。
そして、「お人よし」とひとこと呟き……舞衣の髪を撫でた。

大きな手に触れられざわつく胸。最初は慣れずにただ顔をしかめるだけだったのに……それを心地よく感じているから不思議だった。