ワケあり彼女に愛のキスを




抵抗できなかったわけじゃなかった。

体格の差や力の差があるとはいえ、優悟はそこまで強引に行為に及んだわけじゃない。だから、本気で抵抗すればきっとどうにでもなったのだろうという事は舞衣にも分かっていた。

これまで一緒に過ごした中でも、優悟はそこまで強引な事をする男ではないというのも分かっていたから。

それでもたいした抵抗をしなかったのは……なぜなのか。

秀一としか経験がなかったし、これから先だってきっとそうだと思っていた。
それを周りに変だと言われようが、自分にとってはそれしか考えられなかった。それなのに。
優悟に触れられ、嫌だと思えない自分が確かにいた。

今の事だけじゃない。
その前から……多分、二度目のキスの時には心の底から嫌だとは思えていなかった。

それがなんでなのかを考え……浮かんだのは、優悟の浮かべる苦しそうな表情だった。
二度目のキスの時も、今も。優悟はツラそうに眉を潜めていて……それを見た途端、胸の奥がざわざわとし、拒否する言葉が出てこなくなった。

普段、余裕を浮かべている表情が崩れるのを見ると、堪らなく胸が締め付けられてしまい、助けてあげたくて仕方なくなってしまう。
その表情に、いつもの余裕を取り戻してあげたくなってしまう。……そんな優悟を見ていたくなくて。

情だとかそんな類の感情だと言われればそうかもしれないし、違うような気もして……。
そんな風に考え、ソファーに座り膝を抱えている舞衣に、シャワーを済ませて出てきた優悟が気づく。

そして、そんな舞衣を見つめた後、冷蔵庫から水の入ったペットボトルを二本出し、舞衣の隣に座った。

優悟がシャワーから出てきた事にも、近づいてくるのにも気付いていなかったのか、革張りのソファーが沈んだ途端、舞衣の肩が小さく跳ねる。
驚いて見開かれた瞳を見ながら、優悟がペットボトルを一本舞衣に差し出した。