ワケあり彼女に愛のキスを



マンションについてからも舞衣は何も話そうとはしなかった。
そんな舞衣をダイニングの椅子に座らせた優悟が「夕飯、冷凍のピザでいいだろ」と冷凍庫から出したピザをレンジで温め、それを舞衣も黙ったままもそもそと口に入れ。
それから優悟が掃除したお風呂に入り……次に入った優悟がお風呂を上がったところで、ようやく舞衣が「なんで……」と声を出した。

ゴシゴシと髪をタオルで乱暴に拭いていた優悟の手が止まる。
お風呂に入る前まではうつろだった瞳はいつもの勢いはなくしてはいるが、意思を持って優悟に向けられていた。

「なんでって何が?」

そう優悟が返しながらドカッとソファーに腰を下ろす。
隣に座った優悟を真っ直ぐに見つめながら、舞衣がゆっくりと口を開く。

「なんで、秀ちゃんを見せないようにしたの?」
「あー……悪かった」

舞衣からしたら、秀一に会いたかったのだろうから余計な事をしたと思い、優悟が謝ると舞衣は「そうじゃなくて」と首を振った。

「現実を見ろって言ったくせに……なんで?」

眉を寄せながら見つめてくる舞衣の言いたい事が分かり……優悟がぐっと黙る。

舞衣の言う通りだった。秀一との関係を客観的に見た方がいいだとか、現実を見ろだとか、そういった事を言ってきたのは優悟自身だ。

舞衣はフィルター越しにどこか現実から目を逸らしながら秀一を見ている節がある。だから、それを外して、ありのままの現実をちゃんと見て、自分がどういう道を選んでいるのかを自覚しろと。
そしてもっと傷つかない道を選べと……そういう意味で言っていた。

なのに。
あの時、秀一と彼女が並んで歩いているのを見て……咄嗟に舞衣からそれを隠したのも優悟だった。