何か話せば優悟に八つ当たりしてしまう事は分かっていたため、すれ違いざまにそれだけ告げる。
舞衣からすれば、今は関わってきて欲しくなかったためにした行為だったが、一方の優悟からすれば、秀一のところに行くという舞衣を、はいそうですかと送り出すわけには当然いかない。
舞衣の様子がおかしいのだから余計に。
ふらふらともトボトボともとれる歩き方で進む舞衣の腕を、優悟が後ろから掴んで立ち止まらせるも、舞衣は振り向く事はなかった。
「こんな会社の近くで私と一緒にいるところ見られたら、変な噂立てられちゃうよ」
ここはまだ会社から百メートルも離れていない。
しかも時間は十九時前。退社する職員が続々と職員用通路から出てくる時間帯だった。
優悟は舞衣に言われ、一瞬悩むも……舞衣の腕を掴む手にグッと力を込め直す。
「たかが噂だろ。どうでもいい。おまえ、どうした? なんかおかしいだろ」
「おかしくないよ。ただ……秀ちゃんに会いたくなっただけ」
「会いたくなっただけって言っても、今、アパートの部屋で他の女と同棲してんだろ? そんなとこ行ったってまた怪我させられんのがオチだろ。とりあえず顔見せろって」
舞衣の様子がおかしいだけに、そのまま行かせるわけにもいかずに優悟がぐっと腕を引くと……舞衣が勢いよく優悟を振り向く。
必死に睨みつけるような表情に、優悟が目を見開くと、舞衣はバツが悪そうに表情を崩しい……ぐっと歯を食いしばった。
「だって……っ、今話したら絶対に優悟の事……」
不安から暴れる胸の内をすべてぶつけたくなるのをグッと堪えて言う舞衣の腕を、急に優悟が強く引く。
何かと思って驚く舞衣が「な、なに……? やだってば……っ」と抵抗するも、何を考えているのか、優悟はただ引きずるようにして歩き続けていて……。
いつもとは違う様子の優悟に、舞衣がどうしたんだろうと逆に冷静さを取り戻してきた頃、後ろから聞きなれた声が聞こえた。



