優悟の言葉だけが、なぜここまで強く突き刺さるのかは分からない。
けれど、胸を突き刺したそこからパンパンに膨らんでいた秀一への想いが抜けていってしまっているのは確かで……だからこそ、弱気になってしまっていて。
優悟を責める理由なんてひとつもないのは分かっているし、こんなのただの八つ当たりだとも思う。
それを全部分かっていても……確実に変わってきている自分と秀一との関係が怖くて。変わらなきゃいけない時に差し掛かっている気がして、怖くて。
また、ひとりになるのが怖くて……優悟を責める事しかできなかった。
秀一に見捨てられたら、またあの絶望で覆われた日々が目の前に広がるんだと思うと……それが怖くて仕方なかった。
息苦しく感じた舞衣が胸の前でギュッと手を握りしめる。
「秀ちゃん……」と呼んだ声が、消え入りそうに震えていた。
その日の終業後、会社を出て少し歩いたところで舞衣が立ち止まり、スマホを耳に近づけた。
呼び出した番号は言うまでもなく秀一で……そしてやっぱり、電話が繋がる事はなく、スマホの中にはコール音だけが響いていた。
同棲中の彼女といるのか、それとも美川といるのか。どちらにしても電話にさえ出ない今、自分が押しかけたって邪魔な事は分かっていた。
それでも……どうしても、秀一に会いたくて。
目の前の暗闇からどうにか逃れたくて……舞衣がふらっとした足取りで踵を返した。秀一に追い出されたアパートへと向かって一歩、また一歩と踏み出す。
見るだけでもよかった。ただ怒鳴られるだけでも。
この不安な気持ちをどうにかできるのは舞衣にとっては秀一だけで……誰が何と言おうとも、秀一だけが、救いだった。
そのままふらふらと歩き、会社の前まで戻ってきた時、ちょうど職員用のドアから出てきた優悟と鉢合わせになったが……。
「どうした? 戻ってきたりして……忘れモンか?」と首を傾げる優悟には答えず、舞衣が優悟を通りすぎる。
「秀ちゃんのとこ、行くから」



