ワケあり彼女に愛のキスを



少し前、優悟と内間と食堂で一緒になった時には目の敵のように〝あざといところある〟〝天真爛漫さが鼻につく〟と文句を並べていたのに、舞衣が優悟に気がないと分かった途端にこれだから分かりやすい。

あの時の発言は、優悟の前で舞衣の株を落としておきたかったという事だったのだろう。
木村の優悟への想いはなんとなくその時から気付いていただけに、その事については特に何も言わずに舞衣が「そうですかね」と力なく微笑むと、木村が少し言いづらそうに笑顔を崩した。

「でも……美川さんとも噂になってるし、心配よね。もともとは、城ノ内さんが菊池さんと付き合ってたんでしょう?」

社内に流れている噂と言えば、舞衣が中学の時からずっと秀一に想いを寄せているらしいという事、それなのに秀一はそんな舞衣をぞんざいに扱っているという事。

改めて思うと、決して、付き合っているらしいという内容ではなく、完全に舞衣の一方通行で……。
それに気付いた舞衣が、目を伏せなんとか微笑みを浮かべる。

「そうなんですかね……」と答えた声が、消え入りそうだった。

元々、秀一との関係に疑問がなかったかと言われれば、大きくは頷けない。舞衣自身、少しおかしいとは思ってはいた。
けれど、こんな風に弱気になってしまった事なんて一度もなかった。

殴られた時だって、それこそ、部屋をひどい理由で追い出された時だって、ここまで気持ちが落ち込んだりはしなかったのに……それがなんで今更。

そんな風に思い、優悟の顔が頭に浮かぶ。

別に優悟に色々と言われたからっていう訳じゃない。色々言う人は今までだって周りにたくさんいたし、舞衣と秀一の関係を聞いた人間はみんな口を揃えて同じことを言っていたんだし、決して優悟に言われたからじゃない。

それでも……なんでと考えた時、浮かぶのは優悟に言われた言葉ばかりで。
それが、自分を弱気にしてしまっているのだと舞衣が思うのも無理はなかった。だって他には思い浮かぶものなんてないのだから。