「なんだよ。友達んとことか行けよ」
「……友達なんていない」
「嘘つくなよ。じゃあ実家帰れ」
「実家になんて帰ったら、なんでアパート帰らないんだって聞かれちゃうし」
「じゃあ……あれだ。どっか安いホテルとか泊まればいいだろ。給料日過ぎたばっかだし金あんだろ?」
「お金は、秀ちゃんが管理してたから……三千円くらいしか持ってない」
予想外の回答に優悟が「は?」と顔をしかめると、舞衣が説明する。
「秀ちゃん、いつか会計士になりたいんだって。だから、お金の事とか今からやりくりして色々勉強したいって……」
「騙されてんだろ、それ」
「だからお願い! 一晩でいいの……っ。そしたら明日大家さんに頼んでスペアキー借りてなんとかするから!」
「だったら今から大家んとこ行けばいいだろ」
「大家さん、おじいさんだからもう寝ちゃう時間だし。
前、水漏れ騒動があった時、19時だったけどピンポン押したらパジャマで出てきたもん」
だから無理なの、という舞衣に、優悟が眉間に寄ったシワを増やしため息を落とす。
返ってくる言葉のほとんどが想定外で理解できず、頭がくらくらとしていた。
夢が会計士だとか大家がじいさんだとかどうなってんだと。
「お願い……あ、なんでもするから! 北川さんがして欲しい事、なんでもする!」
「じゃあうちに来るな」
「じゃあ、秀ちゃんから鍵取り返してきてよ」
「なんでだよっ。つーか、あんなヤツんトコなんか帰るなよ!」
「だったら泊めてくれたっていいじゃない! 私、秀ちゃんの所か北川さんの所しか行く場所ないんだもん……」



