失礼だが、顧客のレベルも分けられていて、コーヒーはコーヒーでも、インスタントを出す顧客とドリップする顧客に分かれている。
もちろん、大手取引先社長には時間をかけてドリップしたコーヒーを入れるのだが。
そのうちのひとつの会社社長が割とわがままで、その時の気分に応じて注文をつけてくるために、その顧客相手の時だけは注意が必要だというのは、受付の中に知れ渡っている注意事項だった。
気分によって、ドリップコーヒーから炭酸水まで注文してくるのだから困る。
ここはファミレスでもカフェでもないのに、とは思わなくはないものの、望まれたら買いに走るしかないというのももう、受付の中では知れ渡っている事だった。
十数人が使っていた会議室の片づけを頼まれ、舞衣が出向くと、中ではもう木村が片付けに取りかかっていた。
会議中何か用事があった時のために、必ずひとりは部屋の隅に待機しているようにという決まりがあるが、それが今回は木村だったのは、木村が常務のお気に入りだからという極めて個人的な理由からだったが、割とそんなくだらない理由で決められる事は少なくない。
常務の時には木村、というのはもう受付の中では暗黙の了解となっていた。
ブラインド越しの西日が差しこむ、第一会議室。
「お疲れ様でした」と声をかけながら部屋に入り、端の長机から片付けに入ると、学校の教室のように並べられているそれぞれの長机から灰皿を回収しながら木村が言う。
「そういえば、城ノ内さんって北川さんと仲がいいの?」
突然の問いかけに舞衣が「え?」と手を止めると、木村は作業を続けながら聞く。
「少し前、北川さんと内間さんと食堂で一緒になった事があったじゃない。その時の雰囲気でなんとなく」
「そういえばありましたね、そんな事……でも別に仲がいいわけではないです」
木村がなんで仲がいいと思ったのかが分からないだけに、少しビクビクとしながら答える。
あの時優悟は舞衣を庇ったりもしたが、そんなに不自然ではなかったハズだ。なのにどうして……と舞衣が考えながら、トレーの上に空になったカップを乗せていると、木村が言う。



