「木山、お前も初めて臭い飯喰う訳じゃねえから判ってんだろうが、今のうちに自分からゲロっちまった方が後々身の為なんだぜ。俺達の方から証拠突き付けられてからと、自分から素直に吐いちまうのでは、打たれる懲役も変わって来るってもんだ」

「……」

 どうも刑事達は未解決の事件を私のヤマだと思い込んでいるようだ。しかも、言葉の端々に単なる窃盗事件以外の事を臭わせている。

「強行班の調べは盜班の調べとは訳が違うぜ……」

 中年の刑事が言う。

 強行班?

 タタキやコロシを扱う捜査一課……

 私は慌てて中年の刑事に言った。

「強行班って……自分はここんとこそんなヤマを踏んでないですよ。」

 刑事達がふんと鼻で笑うような表情を見せた。

「お前、タタキのマエがあったよな。確かに最近はチンケな盗みだけでムショに行ってるが、若い時はなかなか太いヤマを踏んでんじゃねえか……。
 八月の四日に車上荒らしで七万をせしめて、次のヤマ迄の間が二週間てのは随分と日にちが開いてんじゃねえか、ええ?
 まともに仕事もしねえヤサ無しのお前が、たった七万ぽっちの金でどうやって二週間余りも過ごせんだ?いい加減な事言ってんじゃねえぞ!」

 いきなり中年の刑事が私の目の前に顔を近付けた。

 刑事の唾が私の顔に飛ぶ。

 顔を背ける私に、

「よそ見してんじゃねえ!」

 いきなり胸倉を掴まれた。

「木山、もう一ぺん聞くぞ、八月四日から次のヤマを踏む八月二十九日迄の間、どうやって過ごした」

「パ、パチンコで三日続けて勝てたから、そ、それで暫くはヤマを踏まずに……」

「パチンコだと?何処の何という店だ?」

「吉祥寺の店で、初めて行った店だったから名前迄は覚えてないよ……」

「ほう、随分と眠い事語ってんじゃねえか。三日も続けて勝った人間が、その店の名前を忘れちまうだと?
 忘れたんじゃなくて元からそんな店ねえんだろが!舐めた話ししてんじゃねえ!」

 怒声が刑事部屋にまで響いた。

「おいっ、大垣、あの写真持って来い!」

 煙草をくれた若い刑事が刑事部屋へ行った。