浅野が自分のデスクに森山を呼んだ。
「森山君、さっきの件だが、知っての通り現在うちでは重要な裁判を幾つか抱えてる。私自身、手一杯だ。高橋君は民事訴訟と別件の示談で暫くはそっちに掛かり切りになるし、野間口君にしても、私や高橋君のサポートをしながら刑事事件の裁判を担当しなければならない。それに、冤罪を争う裁判ともなれば、終わりの見えない戦いになる」
「費用の事ですか?」
「そっちの方は問題無い。裁判に勝てば、今度は国を相手に慰謝料の請求が出来、そこから報酬を支払って貰う事も出来るし、当面は、民間の支援団体と連携を取り、それでやりくりをすればいい。場合によっては、うちが他の裁判で得た報酬を費用に回してもいいんだ。だから、金とかは問題じゃない。関わる人間、費やす時間、それに耐えられるかが重要なんだ。
想像以上の困難が待っている。単にやり甲斐があるとか、青臭い人道主義だけで乗り切れる問題じゃない。
いいかね、一旦関わる事になったら、絶対に降りられないんだ。生半可な正義感だけでは、こういった裁判に首を突っ込むものではない。と、これだけ釘を刺してるのだから、もう察しは付くと思うが、担当するなら君自身の手でやって貰いたい。勿論、事務所としてのバックアップはする。
君が、浅野弁護士事務所の代表として、国と戦うんだ」
「ぼ、僕が、ですか?」
「さっきも言ったが、現状で動ける人間は居ない。君が現在やっている仕事は、事務に任せれば遣り繰りは出来る。
まあ、全て君一人でという事ではない。いざという時は、その時その時に動ける者が君をサポートする。それに、この裁判をうちがやると言っても、現在は国選の弁護士が付いている。一審が終われば、恐らく控訴審へ進む筈だから、その時にうちから手を挙げればいい。一審判決迄それ程時間が残ってないが、その間にしっかりと下準備しとけ」
「わ、判りました」
「森山君」
「はい……」
「国家権力相手だ。討ち死にして本望と思え」
「は、はいっ!」
森山は身体が熱く感じた。
小刻みに震える手を握り絞め、拳に力を込めた。
「森山君、さっきの件だが、知っての通り現在うちでは重要な裁判を幾つか抱えてる。私自身、手一杯だ。高橋君は民事訴訟と別件の示談で暫くはそっちに掛かり切りになるし、野間口君にしても、私や高橋君のサポートをしながら刑事事件の裁判を担当しなければならない。それに、冤罪を争う裁判ともなれば、終わりの見えない戦いになる」
「費用の事ですか?」
「そっちの方は問題無い。裁判に勝てば、今度は国を相手に慰謝料の請求が出来、そこから報酬を支払って貰う事も出来るし、当面は、民間の支援団体と連携を取り、それでやりくりをすればいい。場合によっては、うちが他の裁判で得た報酬を費用に回してもいいんだ。だから、金とかは問題じゃない。関わる人間、費やす時間、それに耐えられるかが重要なんだ。
想像以上の困難が待っている。単にやり甲斐があるとか、青臭い人道主義だけで乗り切れる問題じゃない。
いいかね、一旦関わる事になったら、絶対に降りられないんだ。生半可な正義感だけでは、こういった裁判に首を突っ込むものではない。と、これだけ釘を刺してるのだから、もう察しは付くと思うが、担当するなら君自身の手でやって貰いたい。勿論、事務所としてのバックアップはする。
君が、浅野弁護士事務所の代表として、国と戦うんだ」
「ぼ、僕が、ですか?」
「さっきも言ったが、現状で動ける人間は居ない。君が現在やっている仕事は、事務に任せれば遣り繰りは出来る。
まあ、全て君一人でという事ではない。いざという時は、その時その時に動ける者が君をサポートする。それに、この裁判をうちがやると言っても、現在は国選の弁護士が付いている。一審が終われば、恐らく控訴審へ進む筈だから、その時にうちから手を挙げればいい。一審判決迄それ程時間が残ってないが、その間にしっかりと下準備しとけ」
「わ、判りました」
「森山君」
「はい……」
「国家権力相手だ。討ち死にして本望と思え」
「は、はいっ!」
森山は身体が熱く感じた。
小刻みに震える手を握り絞め、拳に力を込めた。



