自白……供述調書

 野間口妙子は食い入るように調書の続きを読んで行った。

「ここの件、ここもおかしいわ。
『質問……建物の高さは覚えているか。
 答え……覚えていない。
 質問……結構高かったのではないか。
 答え……そうかも知れない。
 質問……何処から侵入したのか。
 答え……窓。
 質問……何時ものようにベランダから入ったのではないか。
 答え……そうだと思う。』
 これって証言の誘導じゃない?」

「それだけじゃないんです。木山は、これ迄も多くの犯罪を犯して来ています。一番多いのが、空き巣なんですが、これ迄彼が侵入した場所って、アパートか一軒家なんです。それも、侵入した所は全部一階。光が丘の現場は七階建てのマンションで、しかも三階なんです」

「窃盗犯の殆どは、手口が共通しているものよね……。
 他に矛盾していると思った点はあるの?」

「木山の体格です。」

「……?」

「いいですか、もう一度マンションの写真を見て下さい。ベランダ側、よおく見て下さいね。
 木山の身長は162㌢で体重が72㌔。こっちが木山の全身写真です。四年前の時で、今より少し痩せていてこの体形です。で、もう一度マンションの写真を。気付きませんか?
 このマンションって、のっぺりした造りになっていて、手摺りになりそうな物と言えば、配管関係のパイプしか無いんです。ベランダ伝いによじ登るには、相当運動能力があって、手足が長くなければ不可能です」

「配管が手摺りがわりの可能性って言ったけど、この写真からは見えないわ」

「見える訳が無いんです。ベランダ側には無くて、反対側の側壁にあります。仮にそこを伝ったとしても、被害者の部屋へ行くには、横に何メートルも移動しなければなりません。302号室に辿り着く迄に、部屋数で七つ通り過ぎなきゃならない……」

「不自然ね……」

「でしょ!」

 野間口妙子は正直驚いていた。

 余り仕事が出来そうもない昼行灯みたいな森山が、自分が見落としていた点をこうまで詳細に調べ上げたとは俄かには信じられない。

 と、森山を呼ぶ浅野の声がした。