自白……供述調書

「次に調べたのは、木山悟が訴えているように自白の強要があったかどうかなんですが、ならば当然、担当した刑事を参考証人として召喚するのが普通ですよね。それがされていない。驚く事に弁護側からも無かった。
 大体がですよ、強盗殺人の容疑者が無罪を主張している裁判が、僅か三ヶ月で求刑迄行くって短すぎませんか?
 特に集中審議した訳でも無いし」

「罪状認否から求刑迄の公判回数と、一回の時間は?」

「回数は全部で五回。内一回は検察側の朗読と罪状認否だけですから、10分も掛かってない。三度に渡る公判も、合計所要時間2時間と47分。論告求刑と弁護側の最終弁論の時は15分……」

「確かに短いわね……」

「そう思うでしょ、それに、木山は警察での取調べで、供述が二転三転しているんです。盗った金額も違ってるし、凶器の件なんかでも、警察の誘導で証言したとしか思えない調書の内容なんですよ。
 上申書と調書も食い違ってる部分がある。中でも、一番おかしい所が、侵入手口に関する調書なんですが、これです。読んでみて」

 野間口妙子は、外していた眼鏡を掛け直し、示された箇所を読んだ。

「『質問……その建物の色は何色だったか。
 答え……白。
 質問……白よりももう少しくすんでいなかったか。例えば灰色に近いとか。
 答え……白。古い洋館で白い色。』ねえ、森山君、実際の色は何色だったの?」

「これが写真。白に見えます?
 完璧な灰色でしょ。ちなみに、この写真は昼間撮ったものです。推定犯行時刻は、夜。周囲の街灯とかで多少の明るさはあったとしても、暗かったのに白と断言しちゃってるのは変じゃないですか。寧ろ、白を灰色とかと間違える方が自然だ」