自白……供述調書

「森山君、さっきは随分と先生に食いついていたみたいだけど?」

 普段、昼行灯のように目立たない彼が、別人のように何かを訴えている姿を見て、野間口妙子は興味を持った。

「はあ、この前の事です」

「この前?」

 野間口妙子には何の話か判らなかった。

「木山悟の裁判です」

「ああ、あれ。それを、まさか?」

「ええ、自分で資料を調べ直して、リポートにまとめたんです。読んで下さいってただ渡しただけじゃ、きっと何時迄経っても読んで貰えないと思ったので」

「リポート……一度私が調べた内容じゃご不満という訳か」

「別にそういう訳じゃないんです」

「じゃあ、何処に貴方は疑問を感じたの?
 森山先生の見解を此処で拝聴出来れば幸いなんですけど」

 言われた森山は、野間口妙子の上から見下すような態度にムッとしたが、自分の調べ上げた疑問点を簡単に説明し始めた。

「最初は具体的な疑問という訳では無かったんです」

「それで?」

「おかしいなって、思ったきっかけは、裁判自体の長さと回数だったんです」

「長さと回数?」

「ええ、無実を争う裁判にしては何かアッサリしてるなっていうのが印象だったんです。それで、何度か公判記録を読み返すうちに、事件の物証や本人の供述調書に関する検察側の質問が抜けてるんです。何だかその部分を避けてるみたいな……」

「で?」

「先ず、事件当日に現場近くで容疑者らしき人物を目撃したという女性を証人として質問しているんですが、警察での調書の証言とこの時の証言ではニュアンスが違うんです。
 いいですか……ええと、あ、此処です。『この人に間違いありません。』これが警察での証言。『多分そうだと思います。似てます。』間違い無い、から、多分となって、最後に似てます、と言ってるんです。
 検事も、これ以上は薮蛇になるかも知れないと思ったのでしょうか、質問をこの後はしてません」

「弁護人からは、その辺は突っ込まれなかったの?」

「何も……」

「続けて……」