自白……供述調書

 保安課長直々に呼び出された栗田は、まさか?という疑念を抱いた。

 又あの現場に立ち会う事を命ぜられるのか?

 緊張の面持ちで保安課長室の扉をノックした。

「どうぞ」

「失礼致します」

「すまんな呼び立てたりして」

「いえ……」

「君から提出されている動静報告書を読んでね。それで、少し話しを聞こうかと思ったんだ」

 あの件では無かった。

 何処か安堵に似た気持ちになったが、動静報告書の件と判り、今度は別な思いが湧いて来た。

「1357番、木山悟の事だが、君からの報告書を読むと、かなり注意が必要で深刻な状態になりつつあると書いてある」

「はい。先日、一回目の論告求刑があり、極刑を言い渡されまして、本人の状態が余り芳しく無いように感じ、そのように報告書を書きました」

「うん、君自身が個別面談の必要有りと書いてあったが、それ以外に上級職員の面談も必要有りとなっている」

「はい、上級職の方々に直接確認して頂いた方がと思いまして」

「現場の区長や係長はどうしてる?その為に毎日巡回してる訳だろ?更に上の者をとわざわざ書いているが、知ってるように、この東京拘置所には、それ以上に神経を使わなければならない収容者が多く居るんだ。余り上に手を焼かすような報告書は控えてくれんか。現場で対処出来る事は、極力現場でやってくれ」

「はい。了解しました……」

 まるで納得していない栗田であったが、この場ではそう答えるしかなかった。

 一礼して保安課長室を出ようとすると、

「栗田君、君には期待しているんだ。頑張ってくれ」

「ありがとうございます。失礼します」

 おざなりのような激励……

 すっきりしない気持ちの仕舞い所が見つからなく、澱んだ気持ちのまま仕事に戻ると、交代の職員が目配せをして来た。

「木山がまるで食事を摂ってないんです。衛生夫が下げていいかと指示を仰いでますが……」

「全然か?」

「夕べから一口も……」

 木山が手を付けなかった朝食が担当台に置かれてあった。