自白……供述調書

　その日、特に案件も抱えてなかった森山は、自分のデスクで裁判記録の検索をしていた。

　法務省から流される公判記録をコンピューターで見て、その中で自分達が売り込める事件や訴訟が無いかどうかを調べる為だ。

　同じように、警察庁や警視庁から公開されてる事件、逮捕記録も、自分達の売り込み先を見つける資料になる。

　浅野弁護士事務所にも、国選の依頼が来る。

　何件かに一件の割合で引き受ける場合があるが、代表の浅野は担当しない。引き受ける際は、浅野が指示を出す。抱えている若い弁護士達の実戦練習にその場が選ばれ、担当を浅野から順番に指名されるのだ。

　森山も、そういった理由から何度か刑事裁判の国選の弁護を任された経験がある。

　その仕事には、弁護士としての理想や理念を抱かせるものは無かった。

　窃盗、詐欺、強盗、暴行傷害、強姦等いずれの事件も検察と争う余地の無い事件ばかりだ。時には、弁護自体を辞退したくなるような依頼人に当たってしまう事もある。寧ろその方が多い。

　弁護人である自分の方が、この刑罰では手緩いのではないかと思える事件もあった。

　ただ機械的に流される日々が続く中、森山はその日、珍しく興味を引く公判記録を目にした。

　目を引いた理由は、公判文章のある一句であった。

　そこには、

『自白は強要されたものであり、私は無罪である事を主張する。』

　とあった。

　右手のマウスがピタリと止まった。