自白……供述調書

 浅野弁護士事務所は大学時代の先輩からの紹介だった。

 ゼミの二年先輩が、この事務所の代表である浅野弁護士と繋がりがあり、それで紹介して貰った。

 霞ヶ関に近い有楽町の近代的なオフィスビルに事務所を構え、事務所自体も洗練された造りになっていた。

 その威容に圧倒され、気後れしてしまう位だ。

 事務所には、代表の浅野弁護士の他に二人の弁護士と、助手を勤める者が五人、経理や事務全般を担当する者が三人居た。

 個人事務所としては、小さくも無く大きくも無い。だが、入っているビルや事務所の威容を見る限りでは、何十人と弁護士を抱えていておかしく無いイメージを抱かせる。

 代表の浅野弁護士は、刑事民事のいずれも引き受ける。

 司法の世界でのキャリアは、東京地検特捜部からスタートという、いわばこの世界のエリートである。

 四十代後半で弁護士に転身。

 高額の弁護料を取る事で有名だが、一方で無償の仕事も引き受ける。

 法外な弁護料は、取れる相手からしか取らない。

 無償の弁護活動をする場合は、その案件を引き受ける事によって、自分の名声が上がるかどうかが基準になる。

 と、森山は最近迄思っていた。

 浅野の真意を知るのは、もう少し後の事になるのだが、この時迄はそういった事もあり、余り良いイメージを持っていなかった。

 理想と現実の狭間の中で、森山は与えられた仕事を機械的にこなすだけの日々を送っていた。