森山篤は、浅野弁護士事務所に入って三年目。弁護士になってから入った事務所だ。
その前に居た弁護士事務所では、司法試験に合格する迄、事務を五年やっていた。
国立大学の法学部に在学中からバイトで在籍していた事務所だったが、いいように雑用ばかりやらされ、肝心の弁護士としての勉強が出来なかった。
大学を卒業してから三度目の司法試験で合格し、同時に前の事務所を退職した。そのまま残っても、バイトの延長線上でしか働かせて貰えない事が見え見えだったからだ。それと、その事務所では自分が望んでいたような弁護士活動は無理だと思ったのである。
森山が弁護士になりたいと思い始めたのは、中学に入って間もない頃であった。
姉の本を盗み読みしたのがきっかけだった。
アメリカの作家が書いたその分厚い小説は、森山少年に計り知れない程の影響を与えた。
物語は自分の娘をレイプされた黒人の父親が、加害者の白人青年を裁判中に射殺し、その罪で裁かれるという法廷ドラマであった。
事件が起きた場所は旧来より人種差別が根強いアメリカ南部。誰もが黒人の父親に死刑を望んだ。
弁護を買って出ようという弁護士も居ないし、国や州から依頼されても皆尻込みをした。
そんな中で、漸く弁護士が決まり裁判は進んで行く。担当の主任弁護士は成り立ての若い弁護士。
引き受けた当初は、勝ち目の無い裁判だと諦め、無気力な一面も見せていたが、サポートする仲間の弁護士達の協力もあって事件の真相を知り、訴えるようになる……
人種差別、罪とは何か、法とは……
読む者に多くの事を訴えかけて来る物語だった。
読み終えた森山少年は、弁護士という職業に感動を受け、なりたいと思った。
最初は、熱し易い少年特有の夢であったのが、時を経て現実の目標となった。
もう姉の本を盗み読みはしていないが、今でもその小説を読む。
念願だった弁護士。
だが、夢と理想に胸を膨らませていた彼に、現実は心を挫かせる面ばかりを見せ続けていた。
その前に居た弁護士事務所では、司法試験に合格する迄、事務を五年やっていた。
国立大学の法学部に在学中からバイトで在籍していた事務所だったが、いいように雑用ばかりやらされ、肝心の弁護士としての勉強が出来なかった。
大学を卒業してから三度目の司法試験で合格し、同時に前の事務所を退職した。そのまま残っても、バイトの延長線上でしか働かせて貰えない事が見え見えだったからだ。それと、その事務所では自分が望んでいたような弁護士活動は無理だと思ったのである。
森山が弁護士になりたいと思い始めたのは、中学に入って間もない頃であった。
姉の本を盗み読みしたのがきっかけだった。
アメリカの作家が書いたその分厚い小説は、森山少年に計り知れない程の影響を与えた。
物語は自分の娘をレイプされた黒人の父親が、加害者の白人青年を裁判中に射殺し、その罪で裁かれるという法廷ドラマであった。
事件が起きた場所は旧来より人種差別が根強いアメリカ南部。誰もが黒人の父親に死刑を望んだ。
弁護を買って出ようという弁護士も居ないし、国や州から依頼されても皆尻込みをした。
そんな中で、漸く弁護士が決まり裁判は進んで行く。担当の主任弁護士は成り立ての若い弁護士。
引き受けた当初は、勝ち目の無い裁判だと諦め、無気力な一面も見せていたが、サポートする仲間の弁護士達の協力もあって事件の真相を知り、訴えるようになる……
人種差別、罪とは何か、法とは……
読む者に多くの事を訴えかけて来る物語だった。
読み終えた森山少年は、弁護士という職業に感動を受け、なりたいと思った。
最初は、熱し易い少年特有の夢であったのが、時を経て現実の目標となった。
もう姉の本を盗み読みはしていないが、今でもその小説を読む。
念願だった弁護士。
だが、夢と理想に胸を膨らませていた彼に、現実は心を挫かせる面ばかりを見せ続けていた。



