私の心の中に、栗田の言葉が不思議に居座り続けた。
消灯時間になり、小さな電球の灯りだけとなった独居房の天井に、栗田の眼差しが浮かぶ。
判ったような事言いやがって、どんなに偽善者ぶったって、あんたは俺の本当の気持ちなんて判りゃしないさ……
何時でも話しを聞く?
聞いて貰って無実が証明して貰えるなら、とっくに無実になってるさ……
浅い眠りの夜がここ一ヶ月ばかり続いている。
深い眠りに入ろうとすると夢を見る。
警察の取調べで見せられた被害者の惨たらしい姿が、必ず現れるのだ。
最近は、昔、自分が犯した何件もの強盗事件の場面がそれに被さる。
ある日、都内の質屋に包丁を持って押し入った。
最初から強盗を働くつもりでは無かった。
その質屋は店舗だけになっていたから、深夜なら人は居ないと思い、忍び込んだのだ。
しかし、気持ちの何処かに、人が居たらその時は……という思いがあった。
脅しの為……
万が一の場合だけだ……
傷付けたり、ましてや殺したりは絶対にしたくない……
別に人道的な気持ちでそう思った訳では無い。
人を殺して死刑とかにはなりたくなかっただけだ。
刃渡り30㎝余りの刺身包丁を懐に忍ばせて押し入った。
ところが、深夜で人が居ないと思っていたのに、その夜に限って店主が居た。物色している最中に気付かれた私は、慌てた。
気丈な店主は、私を取り押さえようと組み付いて来た。
咄嗟に懐から包丁を出し、相手を脅そうとしたが、気が立っているものだから、店主に恐怖の色など無い。持っていた包丁を握られた私は、更に慌てた。
もう逃げる事しか頭に思い浮かばなかった。
自分から包丁を放し、私は必死になって現場から逃げようとした。
捕まえようとした店主は、何処かに足を取られたのか、その場に倒れ、私はその隙に逃げた。
逃げる際に、私を憎々しげに睨んだ店主の顔が、何年も経った今になって夢に現れて来るのである。
そして、その顔が……
消灯時間になり、小さな電球の灯りだけとなった独居房の天井に、栗田の眼差しが浮かぶ。
判ったような事言いやがって、どんなに偽善者ぶったって、あんたは俺の本当の気持ちなんて判りゃしないさ……
何時でも話しを聞く?
聞いて貰って無実が証明して貰えるなら、とっくに無実になってるさ……
浅い眠りの夜がここ一ヶ月ばかり続いている。
深い眠りに入ろうとすると夢を見る。
警察の取調べで見せられた被害者の惨たらしい姿が、必ず現れるのだ。
最近は、昔、自分が犯した何件もの強盗事件の場面がそれに被さる。
ある日、都内の質屋に包丁を持って押し入った。
最初から強盗を働くつもりでは無かった。
その質屋は店舗だけになっていたから、深夜なら人は居ないと思い、忍び込んだのだ。
しかし、気持ちの何処かに、人が居たらその時は……という思いがあった。
脅しの為……
万が一の場合だけだ……
傷付けたり、ましてや殺したりは絶対にしたくない……
別に人道的な気持ちでそう思った訳では無い。
人を殺して死刑とかにはなりたくなかっただけだ。
刃渡り30㎝余りの刺身包丁を懐に忍ばせて押し入った。
ところが、深夜で人が居ないと思っていたのに、その夜に限って店主が居た。物色している最中に気付かれた私は、慌てた。
気丈な店主は、私を取り押さえようと組み付いて来た。
咄嗟に懐から包丁を出し、相手を脅そうとしたが、気が立っているものだから、店主に恐怖の色など無い。持っていた包丁を握られた私は、更に慌てた。
もう逃げる事しか頭に思い浮かばなかった。
自分から包丁を放し、私は必死になって現場から逃げようとした。
捕まえようとした店主は、何処かに足を取られたのか、その場に倒れ、私はその隙に逃げた。
逃げる際に、私を憎々しげに睨んだ店主の顔が、何年も経った今になって夢に現れて来るのである。
そして、その顔が……



