自白……供述調書

 警備隊配属当初は、ただただ職務の雑多さに心身の疲労を感じていただけだった。が、ある事があってから自分の仕事というものを見つめ直すようになった。

 ある事。

 栗田の人生に暗い陰を落とすような出来事だった。

 その日、何時ものように出勤し、自分の職務配置を確認しようとした。

 待機室のホワイトボードで自分の名前を確認すると、名札が待機の欄に貼られていた。

 自分以外に数名の名前があったが、いずれも班が違う。

 普通、班毎に職務配置はされる。たまに、急病人や出張とかで別な班の配置に応援に回される事はあるが、こういう形で待機というのは珍しい。

 栗田自身、初めての事であった。更に待機の欄の上に目をやると、そこには上級職の名前が何人も在った。

 ひょっとしたら……

 一瞬、ある事が頭を過ぎったが、直ぐにそれを打ち消した。

 待機室のソファに腰を下ろしていると、先輩の一人が、

「午前中でお役御免だな。早く帰っても、カミさんには本当の事は言わん方がいいぞ」

 と言って自販機から缶コーヒーを二本取り出し、一本を差し出した。

「はあ……」

 打ち消したものが、はっきりとした形になって再び広がった。

 朝の配置と、夜勤者との引き継ぎで待機室はごった返していた。

 ホワイトボードの待機の欄に名札が貼られているのを見つけた者が、

「やっぱり今日か、そろそろじゃねえかと思ってたんだよなあ」

「今度の法務大臣はやるだろうとは言われてたけど、就任してまだ間もないだろ?」

「まだ三ヶ月っす。記録かも」

「何人かなぁ……」

「この前からどれ位経ってましたっけ?」

「一昨年じゃなかったっけ?あん時は三人だったけど、今日は誰なんだろうなぁ」

 当事者では無い者達の会話……

 そこには単なる野次馬的な感情しか無かった。