「今度はだんまりか?お前がそういうつもりならこっちもそういう扱いをするぞ」

 そう言うと、マムシはあっさりと部屋を出て行った。入れ代わるように昨日の銀縁が入って来た。

「戻るぞ」

 銀縁の戻るぞが、あの部屋へという意味だと判った時、私は昨夜以上に取り乱し、その部屋へ入れられる事を拒んだ。

 廊下にへたり込む私を引きずりながら、

「自分で撒いた種だ、じっくりここで頭を冷やすんだな」

 抵抗らしい抵抗も出来ず、私は再び保護房に入れられた。

 保護房に於ける拘禁は、監獄法の定めにより、72時間を超えての拘禁は出来ない。

 だが、これもやり方があり、一旦、一般舎房に戻し、ものの10分とせず保護房に戻す方法を取る。

 もっといい加減な時は、取調室で一旦解除の言い渡しだけをし、そのまま戻す場合もある。

 この時の私はそれをやられた。

 七日間。

 私は保護房に入れられた。

 二回目の公判があった為、七日で済んだが、もしそうでなかったら、もう暫くはそのままだったかも知れない。

 二回目の公判。

 検察側からの質問が主であった。

 約30分ばかりの質問時間であったが、私の全人格を否定されるかのような地獄のひと時であった。

「被告人に伺いますが、一旦自ら供述した証言を何故、翻したのですか?
 自白を強要されたとありますが、供述調書を読む限りに於いては、一切そのように受け取れる箇所は見当たりません。まして、自ら上伸書を書いた上での供述であり、警察官の尋問も、自らが述べた事件内容に対しての確認作業であったと認められます。
 被告人にもう一度伺いますが、初めは罪の呵責から自白したにも関わらず、時間が経つにつれ、強盗殺人という重罪での極刑を怖れ、証言を覆そうとしてるのではありませんか?」

 テレビや映画の場面なら、この辺りで弁護士が異議有りと手を挙げそうなものだが、私の弁護士はただ書類に目を落とすだけであった。

 私は、取調べ時の状況を話した。明らかに誘導されてのものだと訴えたが、果たして裁判官に伝わったかどうか。

 次の公判日が言い渡され、その日は終わった。