私の第一回目の公判が開かれた。

 罪状認否。

 起訴された亊犯について、それを認めるかどうかを問われる。

 検察側から、先ず逮捕に至った窃盗未遂と住居侵入についての訴状が読み上げられた。

「本公判におきましては、この事件の審理の他に、かねてより手配されておりました強盗殺人事件についても審理して頂きたく願うものであります。
 警察及び検察での供述調書によれば、被告人は当初、本事件を自ら自供し、供述したにも関わらず、その後供述を一転し、無罪を主張しておりますが、本人の供述調書に於ける信憑性と物的証拠を考えれば、充分に本法廷に於いて裁かれるべきものであると認められ、併せて審理して然べきものであると確信致ます……」

 検察側の読み上げる文面は、あくまでも私を強盗殺人の罪で裁こうという強い意思が窺えた。

 裁判官が私を見据えた。

「被告人は答えたくない事に関しては、無理に答える必要はありません。それによって何ら裁判に不利益が生じる事はありませんが、但し、本法廷に於ける発言の全ては記録され、証拠として審理の対象とされますから承知して下さい」

 私の担当弁護士が罪状認否に対し、

「窃盗未遂と住居侵入に関しましては、被告人自身が認めるところでして、何ら争うものではありませんが、先程検察側から申された強盗殺人事件に関しましては、一切の証拠書類に対し、不同意と致します」

 文面にすると、強硬に反対するといった形になっていたが、国選弁護人の口調は何処か淡々としていて、感情がこもっていなかった。