周囲の建物から浮き上がったようにそびえ建つ銀色の高層ビル。

 東京拘置所。

 前回収監された時は、まだ完全に出来上がってなくて、一部の古い舎房棟がまだ使われていた。

 朝早くに警察署を出、一旦、東京地検に行く。二時間ばかり早い昼食を其処で摂らされる。

 裁判を間近に控えた者、既に一審の判決が出ている者等が各警察署から集められ、腰に縄を打たれ手錠をされる。

 大型バスに乗せられ、走る事約一時間。門を二ヶ所ばかり通過し、私達は漸く着いた。

 一日に何十人もの犯罪者がこの東京拘置所に送られて来る。

 それぞれの身分照合と所持品や手荷物の検査を入念に行われ、犯罪歴や罪状、集団生活への適性等を考慮され、それぞれが雑居、独居と振り分けられる。

 昼前に到着して、それぞれが指定の舎房に送り込まれるのは、大体夕方の四時近くになる。

 私は、独居房に送られた。

 過去に何度も犯罪歴があり、刑務所へも行っている私は、古い方の再犯者専用の舎房に入れられるものと思っていた。それが、新しい建物の方になった。

 エレベーターで七階迄行く。

 真新しい廊下を収容者の食事を載せた台車が通った。

 入所者の世話をしたり雑用する役目の受刑者が、私に冷ややかな一瞥をくれる。

 廊下の中央にある担当台に連れられ、担当官の目の前に立たされる。

 氏名、年齢、生年月日……

 何度となく言わされ続けて来た自分の履歴。

「罪名は?」

「……」

「自分の罪名が判らんのか?」

「……住居侵入、窃盗未遂」

「うん、他にもあるだろう?」

「……」

「殺人でも起訴されてるな?」

「……」

「お前がこの罪に関しては不服を抱き、裁判で争おうと考えてる事は、警察からの報告書にも書いてある。その辺の事は、弁護士の先生と充分に話し合って考えなさい。
 今日からは、1357番というのがお前の称呼番号だ。所内生活を守って、裁判を待つように」

 長い長い拘置所での生活が始まった。