本作に於いて死刑執行の件を書いたが、作者自身が実際に見た訳ではないので、ある程度想像の域で書いている部分もある。

但し、執行に際し、数人の刑務官がスイッチの前に立ち、それぞれが同時に押すというのは事実のようだ。

複数の人間が同時にスイッチを押すという理由は、一人の者に人間の死を委ねた場合、その精神的負担は計り知れないものになるからとの配慮が働いているからであろう。

更に、複数の者が同時にスイッチを押せば、万が一押す事を躊躇う者が出たとしても、他の全員が同じように躊躇わない限り、スイッチは誰かが押す事になる。

噂だが、実際に作動するスイッチは一つしか無く、残りはダミーという話しもあるが、定かではない。


執行に関しては、昭和のある時期迄、死刑囚に前の日に知らせていた。

曜日も、毎週決まっていた時期があったようで、その日の朝になると、死刑囚達は、自分の舎房の前で刑務官達の靴音が止まらないかと不安におののいていたという。

この下りは、加賀乙彦氏の小説に詳しい。

現在は、いきなり当日執行される。

ちなみに、十三階段とよく表現され、あたかも階段を昇るように思われるが、実際には個室の中央に舞台でいうところの奈落があり、スイッチが押されるとそれが開く仕組みになっているらしい。



死刑廃止が世界的に叫ばれているが、事件に遭った被害者の関係者の憤りを思えば、簡単に死刑廃止を叫ぶ事は出来ない。


この場で、この問題を殊更に取り上げるつもりは無い。