「野間口さん、浅野先生は?」

「拘置所に面会……」

「そうかあ、第一弁護士会から国選の依頼が廻って来てるんですけど……」

「誰の?」

「誰だと思います?」

「あのね、私は君と違って忙しいの。油売る暇があるんだったら、少し手伝ってくれない」

「知りたくないんですか?間中ですよ。間中邦彦の国選依頼なんですよ」

「それならもう先生が当人に会いに行ってるわよ」

「へ!?」

「変な声出さないでよ。打ち間違えちゃったじゃないの!」

「ごめんなさい」

「ごめんて言えばさあ、自殺した川村大輔が彼女宛てに送ったメールが、ゴメンの一言と顔文字だったでしょ。あれって何だか死というものを軽んじてるような感じよねえ……」

「ゲームの中で簡単に人を殺せるし、死ぬ事自体すごく簡単に考えてる傾向は見られますよね」

「ゲームと人生とを切り離してないから、失敗したら何でもリセットしちゃえって考えてるのかもよ」

「そうなのかなあ、僕なんかもゲーム世代だけど、絶対にそういった考えにはならないけどなあ……」

「どうかしら。結構、君って繊細で打たれ弱い所あるからな……」

「そんな事無いと思いますけど……」

「あらそう?いつぞやの夜、私の胸に顔埋めてわんわん泣いたのどなた様だったかしら?」

「またあ、どうしてそういう作り話しするんです?」

「やっぱり覚えてないのね……」

「はあ?」

「君も精神鑑定受ける?きっと木山同様記憶喪失に多重人格って診断されるかも。」

「意味判んねえ」

「さ、出掛けなきゃ」