重苦しい空気に本間は押し潰されそうになった。

「前に、本間チャンに川村副総監と波多野署長、それと練馬の署長が長野県警以来の繋がりだって話して、あの時は以前の下手打ち同様、捜査ミスの隠蔽だと話したよな。
 今回のは、同じ隠蔽でもただの隠蔽じゃねえ。犯人そのものを隠蔽し、しかも別人を犯人に仕立て上げようとしたんだ。
 本間チャンや佐藤や俺が飛ばされたのは、何も間中を捜査してたからじゃない。間中をパクって調べてるうちに、川村大輔の線に行き着く事を恐れたんだ。こんだけの物的証拠がある。後は本人を叩いて真相を聞き出せば済む。だが、相手は副総監の息子だ。しかも昔の腐れ縁を使って総ぐるみで隠蔽工作をしてるんだ。ワッパ掛けに行く前にこっちのクビが危ない。島送りどころじゃない。場合によったら、不祥事をでっち上げて抹殺される位の事は平気でやりかねん」

「公安の監査使ってアクさん達をこの事件から遠ざけたのも副総監の指示で?」

 若林の疑問に小野田が答えた。

「幾ら副総監であっても公安を動かす事は出来ません。
 我々公安部は独立した内部組織ですから、仮に何らかの指示を受けて動いたとしても、本当の理由は聞かされていない筈です。
 実は、私が本庁から杉並署に出向命令が出された理由というのは、一連の木山に関する事で、自白強要があったのかどうかを内々で調べろという事でした。川村副総監と杉並署の署長は、長野県警神奈川県警と二度、公にこそなってませんが不祥事隠蔽の前科があります。
 光が丘事件の捜査本部に木山の身柄を送らせず、杉並主導で木山の調べを命じたのは副総監です。公安だけでなく、本庁内部でもおかしいと思ってましたので」

「公安からすれば瓢箪から駒が出た訳ですな」

「今回の件を本庁に報告したところ、阿久根さんと連絡を取る事が出来まして」

「本庁内部でもいろいろ複雑な絡みがありますから、公には動けません。そこのところを充分に承知して下さい」