わたしは、お風呂にお湯を貯めようとして浴室の扉に手を掛けた。

 すると、玄関のチャイムが鳴った。


 こんな時間に誰?


 わたしはあの男の顔を思い出した。


 い、厭だ……


 居留守を使おうとチャイムを無視していたが、ずっと鳴り続けている。

 わたしはそっとドアに近付き、ドアミラーに目を当てた。

 ドアミラーから死角の所に立っているのか、姿がはっきりしない。

 僅かに肩口だけが見える。


「どなたですか?」

「隣の者ですけど、佐川さん宛ての小包を預かっているんです」


 なあんだ。


 わたしはホッと胸を撫で下ろし、ドアチェーンを外し、鍵を開けた。


「すみま、せん……」


 いきなり口を塞がれたわたしは、次の瞬間、お腹の辺りに強い衝撃を受けた。


 声が出ない……


 無我夢中でもがくわたし……

 気が付いたらベッドに押し倒されていた。

 塞がれていた口から男の手が離れた瞬間、悲鳴を上げようとした。

 けれどそれは声にならなかった。

 今度は顔に衝撃を受けた。

 痛みを感じる前に気を失った……

 わたしが意識を戻した時、その事を悔やんだ。

 気を失っていたままの方がよかった……

 悍ましい程に恐ろしげな顔が目の前に迫っていた。

 身体が動かない……

 男が馬乗りになっている。

 ブラウスが引き裂かれ、胸が露にされていた。

 男の手がわたしの乳房を揉みしだく。


 た、たすけ…て……


 涙で男の顔が歪む。

 わたしの身体を男の手が這い回る……

 ズキンとする痛みが左側に起きた。


「い、痛……」


 今度はもっと激しい痛みが……

 わたしの意識は遠退いて行った……