「内容が内容だけに、こうして集まって貰う事になったんだが、話しの内容はお察しの通り、昨年8月9日に光が丘で起きた強盗殺人事件の事だ。
 当初、私が現場キャップとして捜査に当たっていたが、知っての通り杉並署に別件逮捕されていた木山悟が自供したという事で我々の捜査本部は解散した。
 当時、私達は最重要容疑者として間中邦彦を捜査対象にしていたのだが、その辺の経緯は省くとして、木山悟を挙げた杉並署では、木山の自白調書一本のみを頼りに無理な取調べを行ってしまった。
 結果は、現在控訴審となって、近いうち、取調べを担当した森警部補の証人尋問が予定されている。ところで、本間チャン、間中は落ちたかい?」

「いえ、それがですね……」

 本間は間中邦彦の供述から、犯人と確信するには至らないと感じ始めていると話した。

「うん。間中は違うよ」

「え!?じゃあ……」

「木山でもない」

 本間と若林の二人は、呆然として顔を互いに見合わせた。

「ここから先の話しはかなりデリケートになる。だから、これからの話しを聞く前に、二人には前以て承知して貰いたいんだ……」

「覚悟っすか?」

「本間チャンは独身だからまだしも、タモっちゃんは家庭がある。いきなり明日の朝になったら路頭に迷うなんて事も充分に有り得る話しなんだ。だから、刑事としてこの先も安穏とやって行く道を選ぶなら、話しを聞く前に帰って貰った方がいい。勿論、帰ったからといって、私は責めない」

「アクさん、こちらのお二方はもうその覚悟が出来てるんでしょ?
 それに、私と本間が帰る訳無い事位、最初から判ってんじゃないですか。なあ本間チャン」

「そうですよ。此処へ来る迄に、薄々は腹括るような事なんだろうなって想像してましたから」

「判った。じゃあ、話しの続きだ……」

 そう言うと、本庁の丹羽警部が一枚の写真を出した。