「俺は…俺には前科があるんだぞ!誰が前科もんの言う事を信じる?
 今だって、今だって現実にあんたは俺を信用してないじゃないか!信じてないから、こうして会いに来たんだろ!?どうだ、違うか!?
 たまたまドアが開いてました、入ったら死んでる女性が居ました、驚いて逃げましたって話を…話しを誰が信じてくれる!あんたも同じ立場になってみろ!」

「僕は、僕は少なくとも信じようとしてます」

「嘘を言うな!弁護士という立場で、高見の見物が出来るからそう言えるんだよ!口先ばっかりで、さも俺の気持ちは判ってますみたいな言い方しやがって!
みんな、まやかしなんだよ。信じてなんかいるわけ、ないだろ、嘘言うな!そんな、そんな、う、そ、を……」

 木山はその場に泣き崩れた。

 隣室に待機していた看護士と医師が異変に気付き、面会室に飛び込んで来た。

「申し訳ありませんが、今日の面会はこれで終わりにして下さい」

 医師はそう言うと、看護士と共に木山を抱き抱え、面会室を出て行った。

 一人残された森山は、木山との一問一答を複雑な思いで振り返っていた。

 最後の涙を彼の真実と受け取るべきか……

 森山は、自分でも判らなくなっていた。