収容されている病院の面会室に行くと、既に木山が居た。

 前回、拘置所で会ってからそれ程の日数が経っていた訳でも無いのに、木山はまるで印象が変わってしまった。

 殆ど陽に当たっていないせいなのか、不健康な位に肌が白く、強い安定剤を投与されているせいで、肌はがさついている。

 頭皮には黄緑色のフケが苔のように張り付いていた。

「調子はどうですか?」

「余り、変わらない、かな……」

「今日は、木山さんに幾つか確認しようと思ってね」

「……」

「前に、光が丘は一度も行った事が無いって言ってたけど、本当は?」

「あれにも書いたけど、前日、川越街道をずっと大山の方から歩いてて、気が付いたらあのマンションの近くに来た……」

「オートロックのマンションだったけど、どうやって入ったの?」

「ベランダ側の非常階段……」

「外階段の事?」

「そう……」

「鍵は掛かって無かった?」

「掛かってたから、フェンスと壁に足を掛けて……」

「乗り越えた?」

「そう……」

「302号室に入ったのはどうやって?」

「ドアが開いていた……」

「どれ位開いていたの?」

 木山は両手でその幅を示した。

「電気とかは?」

「点いていた……」

「女性が奥の部屋で倒れてたとあの文書には書いてあったけど、どういうふうに倒れてたか覚えてます?」

「身体を、ベッドにもたれるように……足が、投げ出されてた」

「玄関からは見えてなかったんですか?」

「台所に行く迄判らなかった……見た瞬間、その場で尻餅を着くようにして倒れたんだ……」

「死体だって直ぐに気付いた?」

「その時、頭を、頭を何処かにぶつけ、痛さのあまりうずくまったんだが……その女性がぴくとも動いてなかったから、それで死んでるんだって……」

「それで、慌てて逃げた?」

「……そう」

「何も盗らずに?」

「ああ……」

「どうしてこの事を取調べの時に話さなかったんです?」

 森山の問いに、木山を急に目を剥いた。