被疑者。

 何らかの事件を犯した者、又はその嫌疑を掛けられ逮捕拘留された者を言う。

 通常の流れは、逮捕されて四十八時間以内に検察庁へ書類送検される。 そこで拘留質問というものがあり、被疑者を拘束して取り調べる必要があると認められると、十日間の拘留となる。

 その間に裁判に掛けるかどうかが判断され、起訴となる訳だが、更に詳しく取り調べる必要があると判断されると、もう十日間の延長をされる。

 検察側は、警察側から上がって来た資料(供述調書や捜査資料等)を元に、裁判を起こす必要があるかどうかを判断する。

 被害者との間に示談等が成立し、事件そのものが成り立たなくなれば、裁判の必要が無くなる。 厳密に言えば、検察側は、裁判で100%勝てるという保証が無ければ起訴にはしない。

 被疑者や被告人の罪の真意を裁くとかでは無く、裁判で勝てるか、しか考えないのだ。 勝つイコール有罪。 罪の軽重の判断は裁判官の仕事なのである。

 裁判迄行き、無罪判決などという事になれば、即ち検察の敗北を意味するのである。 彼等は一旦起訴という判断を下したなら、1%の負けもあってはならないと考える。

 これが検察の基本姿勢であり、付随する警察は年々低下して行く検挙率の低下を食い止める事と、目先の逮捕ノルマの達成にばかり追われる集団になってしまった。

 一つの事件を解決する毎に、担当刑事は点数が上がる。

 点数なのである。 その点数で仕事の査定が上がり、昇進や昇給の対象にもなりうる。

 逮捕実績が上がれば、転勤するにしても、大都市の警察署へと栄転出来る。

 うだつが上がらなければ、地方の警察署へ。

 捜査本部が置かれた警察署以外で容疑者が逮捕されると、場合によっては容疑者の取り合いに発展する事も少なくない。

 本来、逮捕拘留期間が過ぎ、起訴となれば、容疑者の身柄は警察の留置場から拘置所へと移されなければならない。 だが実際には警察の留置室に何ヵ月も身柄を置かれるのが普通である。

 いわゆる代用監獄法。

 冤罪を生みやすくしている悪法である。 起訴後も留置室を刑務所に隣接された拘置所の代わりとし、被告人を押し止めて置く。