先輩刑事に言われた通り、本間は間中の聞き役に徹した。

 話しのポイントポイントを白紙にボールペンで文章にさせながら、少しずつ事件のあらましを聞き出して行った。

 ゆっくりと言葉を選ぶように、そして、時折視線を上げながら、間中は供述し始めた。

「……彼女が光が丘に移ったのを知ってから、僕はずっと会える機会を窺ってました……。でも、どう彼女の前に出て良いのか、どうしたら前の時みたいに偶然のように会う事が出来るのか、判らなかったんです……。だから、暫くは、ただ彼女の姿を眺めてるしか……」

「8月9日の事を覚えてるかい?」

「……覚えて、ます。忘れたくても、忘れられない日だから……」

 そこで言葉が途切れた。

 しばし沈黙が続いた。

 本間は間中が口を開くのを辛抱強く待った。

 間中は、幾分落ち着きを失ったかのように、小刻みに両足を揺らしだした。

 そして、意を決したかのように、間中は深く息を吸い、再び話し始めた。