自白……供述調書

「本間にやらすか……」

 阿久根がそう言うと、

「良い考えかも知れませんね。キソウがパクるなら話しの辻妻が合うし、奴の無念も晴らせる」

「タモっちゃん、キソウにこの件を回す段取り、頼めるかい?」

「いいですよ。うちから回ったなんて、絶対にばれないようにしますから」

「頼む。これで又、横槍でも入っちまったら、それこそホトケさんが浮かばれねえからな。一応、俺からも連絡しとくが、宜しく頼む」

「判りました」

「タモっちゃん、ありがとうよ」

「何を言ってるんですか。礼なんて言われる事じゃないですよ。じゃあ、自分はもう少し奴を搾って詳しく聞き出しときます」

 どうやって間中を引っ張るかで頭を悩ませていたが、阿久根が言ったように殺された被害者の無念さが天に通じたのであろう。

 刑事になって三十年余り、改めて過去の事件を振り返ってみたが、事件解決の発端は、このような偶然の重なりが糸口になる事が多い。

 罪を犯した者は、必ずや償いの場に引きずり出されるものなのだ。

 勿論そうじゃない事件も少なくない。

 しかし、それは捜査員の努力が今一歩足りないからだと阿久根は思っている。

 どんな難事件であろうと、出来る努力を最大限にやっていれば、こういう千載一遇の幸運にも助けられるというものだ。

 被害者の無念と、本間の執念が、偶然とも思えるような幸運をもたらせてくれたのだ。

 仮に真犯人が間中ではないのかも知れないが、事件の真実に近付ける事には違いない。

 阿久根は本間に電話を掛けた。