自白……供述調書

 再び取調室に戻って来た阿久根は、その写真を男の前に差し出した。

「この男か?」

「ああ」

 阿久根と若林は目を合わせ、頷いた。

「間違い無いな?」

「しつこいなあ、そうだって言ってるじゃねえか」

「確認だ、そう尖んがるな。この男とは何回位仕事した?」

「三回だったかな、でも、新宿の時は直ぐ二手に別れたから……」

「この男もネットで仕事しに来た口か?」

「じゃねえのか、よく判んねえよ。あんまし話ししなかったから。」

「だけど、名前と顔は良く覚えてたな」

「ああ、すげえ陰気臭くて薄気味悪かったから。それに、臭くて……」

「体臭がか?」

「ホームレスと同じ臭いだったよ。頭なんか何日も洗ってない感じでさ、だから携帯ショップでも奴が行くと怪しまれて、こっちもやばくなりそうだったもん。一度見たら、忘れたくたって忘れねえよ」

「そうか。ありがとう。話し聞かせて貰って助かったよ。何か冷たいもんでも飲むか?」

「いいの?じゃあ微糖タイプの缶珈琲。ところでさあ、こいつ、他にも悪さしてんの?」

「いや、お前程の大物じゃないよ」

 男は単純なのか、大物と言われ、気を良くし表情を崩した。

 根は悪くない人間なのだろう。

 阿久根と若林は、後を若い刑事達に任せた。

「アクさん、これは天がくれた運というもんですね」

「天というより、ガイシャの怨念かも知れねえ。とにかく、これで間中にフダを出せる」

「ええ。早速手配します」

「それなんだが、ちょっと待ってくれないか」

「待つ?」

「ああ、これをうちがフダ取って挙げようとすりゃ、上が又おかしな動きをするかも知れん。だから、そこんとこを慎重にやなきゃならねえ」

「こうしませんか、うちじゃなく、他所に挙げて貰うってのは……」

 若林の閃きに、阿久根は相好を崩した。