二日後、突然本間と佐藤に移動の辞令が下りた。

「畜生、その手できやがったか……」

 歯噛みする佐藤。

 本間は茫然自失としていた。

 本間の移動先は警視庁第一機動捜査隊。

 佐藤は新宿署のマルボーの係長。

 二人共、辞令だけ見れば栄転である。事情を知らない刑事部屋の連中は、皆、口を揃えて羨ましがった。

 本来の移動の時期からすれば、異例の事だが、警察官の移動は時として突発的にあるから、ごく一部の者を除いては、何ら不思議に思わなかった。

 翌日には二人共移動という慌ただしさの中、非番者と夜勤者以外の者達で送迎会が開かれた。

 課長も出席していたから、本間達は例の話しも出来ず、小一時間程で解散した。

 阿久根は、自分の手をぎゅっと握り、

「お世話になりました」

 と言った本間の無念さを感じ取った。

 佐藤刑事は、やや荒れ気味で、前々から余り仲の良くなかった同僚と少しばかり揉めていた。

 吐き出したくても吐き出せない物が、ヘドロのように沈澱して行く。

 もう直ぐ定年だと言うのに、何だってんだ……

 阿久根も又、二人と同様に燃え切らない怒りが身体の中で燻った。

 その阿久根の自宅に、本間から小包が届いたのは、練馬署を後にした二日後だった。

 中には、手紙と阿久根の大好物である芋羊羹が入っていた。

 若いのに律儀な奴だなと思いながら芋羊羹を一つ摘んだ。

 芋羊羹を頬張りながら封筒開けると、中から短い手紙とメモリースティックが出て来た。