練馬署では、事件発生当初から怨恨ないしは異常行動者の犯行とみて容疑者の割り出しに当たった。

 被害者の交遊関係を全て洗い、マンションの住人への聞き込み調査、そして、事件当夜のマンションの防犯カメラに写った不審者の洗い出しの結果、三人の不審人物が捜査対象になった。

 事件が起きたマンションには、入口エントランスとエレベーター内の二カ所に防犯カメラが設置されている。

 その日の防犯カメラのビデオを解析したところ、二人は事件と無関係である事が判った。

 残った一人の異常な行動が、捜査員全員にこの人間が犯人に違い無いという確信を持たせた。

 その男は、事件当日の夕方5時過ぎにマンションにやって来て、午後9時22分に3階からエレベーターに乗り、外へ出ている。

 その間、この人物は一度も防犯カメラに写っていない。

 つまり、4時間半近くもの間、マンション内の何処かに居た事になる。

 捜査の現場指揮を取っていた阿久根係長は、マンションの住人全員にこの人物の写真を見せ、当日このような人物の来客があったかどうかを聞き込みさせた。

 結果は、無し。

 捜査本部は色めき立ち、この人物の特定を急いだ。

 被害者の知人に写真を見せたところ、そのうちの一人が、興味ある証言をした。

「なんかその人に似てる気がする……。でも、まさかなぁ」

「どんなくだらないと思える事でも構わないから、覚えている事を全て話してくれないかな?」

 その知人の話しはこうだった……