先の裁判に意義申し立てや不服があって控訴をする場合、その申し立てが全て認められる訳では無い。

 上級審で争う為の新たな新事実を上申しなければならない。

 新事実が無かったり、認められなかった場合、控訴棄却される。

 上級審で争う為には、新たな証拠を控訴趣意書に書いて裁判所に提出する。

 この控訴趣意書が認められ、審議に値するものとされて、漸く上級審が開かれるのである。

 新証拠は、あればあっただけいい。

 一の矢だけでなく、二の矢、三の矢と用意するに越した事は無い。

 森山もその辺は心得ていた。

 森山は、事件現場の検証を徹底して行った。

 マンションの管理会社に頭を下げ、建物全体の見取り図と部屋の間取りの図面を貰い、それを元に、警察調書通りの侵入方法を検証してみたのだ。

 その上で、具体的な矛盾点を一つ一つ潰して行く。

 ある時など、現場で侵入方法の実地検証をしていて不審者に間違われ、警察に通報され、大騒ぎになった事があった。

 それ位、この件に関しては徹底して調べた。

 木山のアリバイを確実に証明出来るものが無いから、一番の方法は供述調書の矛盾点を徹底的に突くしかなかった。

 結果、森山が出した推測は、ちょっと驚くべきものだった。