「…………そっか。

そんなことがあったんだ………」




百合は少し目を細めて、やっぱり窓の外を見ている。



さっきの大きな駅でほとんどの人が降りてしまって、車両はがらがらだ。


一番奥の席に、大学生くらいの男の人が乗っているだけで、その人はイヤホンをつけて音楽を聴きながら寝入ってしまったようだった。




静かな車内に、がたん、ごとん、と電車の音だけが響いている。




「 ………それで、涼はなんて答えたの?」



「え……?」



「塾に行くように言われて、涼はなんて返したの?」



「………色々反論したんだけどさ、父さんも母さんも全然わかってくれなくて。

だから、最後は、もういいやってなって、分かった行くよ、って」




百合がふっと視線を俺に向けた。



その顔には、なんとも言えない複雑な色が浮かんでいる。