リビングに沈黙が流れる。



かち、かち、と壁掛け時計の針が進む音だけが聞こえていた。




母さんは眉根を寄せて唇を噛み、じっと俺を見ている。



父さんがはぁ、と息を吐き出した。




「………なあ、涼。

父さんたちは、なにも、夢を見るなと言っているわけじゃない。


お前が頑張っているのは知っている……。


でもな、父さんはお前のことが、お前の将来が心配なんだよ。


サッカーにばかり夢中になっていたら、いざサッカーを失ったとき、お前がどうなってしまうか。

身一つで、この世の中で生きていけるわけがないだろう?


だから、逃げ道として、ちゃんと普通の社会人になる道を用意しておけ、と言っているんだ」




父さんは言い聞かせるようにそう言ったけど、俺は納得なんて出来なかった。